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最高裁判所第二小法廷 昭和56年(あ)716号 決定 1984年4月20日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人関谷信夫の上告趣意は、単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。

なお、所論にかんがみ職権により判断するに、地方自治法八一条二項による普通地方公共団体の長の解職投票においては、その運動の方法及び費用に関する制限が公職選挙法に規定する選挙の場合に比して緩和されているが、地方自治法八五条一項により準用される公職選挙法二二一条一項一号、四号(昭和五〇年法律第六三号による改正前のもの。以下同じ。)の規定を右解職投票に適用するにあたっては、公職選挙法に規定する選挙の場合と異なる制限的な解釈をする理由はなく、いやしくも解職賛否の投票若しくは投票運動に対する報酬として金銭が授受されたときは、たとえその金銭に一部不可分的に費用弁償の趣旨が含まれていたとしても、その全体につき公職選挙法二二一条一項一号、四号所定の罪が成立する(最高裁昭和二九年(あ)第一三三九号同三〇年五月一〇日第三小法廷判決・刑集九巻六号一〇〇六頁、同昭和四三年(あ)第七六六号同四三年七月二五日第一小法廷決定・裁判集刑事一六八号六三五頁参照)と解するのが相当であり、これと同旨の原判断は正当である。

よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 宮崎梧一 裁判官 木下忠良 裁判官 鹽野宜慶 裁判官 大橋 進 裁判官 牧 圭次)

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